【労働】東京地裁令和7年9月10日判決(労働判例1350号40頁)

原告が被告との間で締結した、原告が被告の運営する占いサイトの会員から届くメールに対して、占いの結果を踏まえたアドバイス等をメールで回答する業務に係る契約を、労働契約と認めた事例(確定)


【事案の概要】

(1)被告は、インターネット上に占いサイトを開設し、これを運営することを主たる事業とする株式会社である。
   原告は、令和2年12月3日から、被告がかつて開設し、運営していた「A」という占いサイト(以下「本件占いサイト」という。)の会員から届くメールに対して、「鑑定士」として、占いの結果を踏まえたアドバイス等をメールで回答する業務(以下「本件業務」という。)を行っていた者である。

(2)本件占いサイトでは、会員登録をした会員が、本件占いサイトにおいて1ポイント当たり5円でポイントを購入し、1通当たり150ポイントを使用して「鑑定士」と称する者へメールを送り、「鑑定士」に対して相談をすることができるという仕組みになっていた。そして、上記メールに対する返信は、原告及び被告の従業員が行っていた。
   被告には、本件占いサイトの運営に関する業務全般を担う者としてがいる。

(3)原告は、当初、被告との間で、何ら契約書を交わすことなく、本件業務に従事していたが、
   令和3年6月1日、契約期間を同日から同年10月31日までとする「業務委託契約書」を交わし、
   同年11月1日からは、再び契約書を交わすことなく引続き本件業務に従事していたが、
   令和4年3月1日、期間を同日から同年8月31日までとする「業務委託契約書」を交わし、
   同年9月1日、期間を同日から令和5年2月28日までとする「業務委託契約書」(以下、これらの契約書を合わせて「本件各業務委託契約書」といい、本件各業務委託契約書が交わされていない期間も含め、令和2年12月3日から令和5年2月28日まで、原告と被告との間における本件業務に係る契約を「本件各契約」という。)を交わした。
   本件各契約は、令和5年2月28日をもって終了した。

(4)本件各業務委託契約書には、いずれも次の定めがある。
 ア 第1条(業務委託)
   甲(注:被告を指す。)は乙(注:原告を指す。)に対し、以下の業務(以下「本業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。
  ⑴鑑定業務
 イ 第2条(委託料)
  ⑴甲は乙に対し、本業務の対価として、月額金300,000円及び甲の定める成果報酬を支払う。
  ⑵甲は、前項に定める委託料の当月分を翌月10日までに、乙の指定する銀行口座に振り込む方法によって支払う。
 ウ 第5条(再委託の制限)
   乙は、本業務を第三者に再委託してはならない。但し、甲が承諾したときは、その限りでない。

(5)原告は、本件訴えを提起して、被告との間で労働契約を締結していたと主張して、被告に対し、①労働契約に基づき、令和2年12月1(ママ)日から令和5年2月28日までの割増賃金及びこれらに対する遅延損害金、②労働基準法114条に基づき、付加金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた。


【争点】

   本件の主要な争点は、原告の労働者性である。
   以下、上記の争点についての裁判所の判断の概要を示す。


【裁判所の判断】

(1)争点(原告の労働者性)について
 ア 検討
   a)仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無について
   原告は、毎月、Bに対し、翌月の休日としたい日の希望を伝えるも、必ずしもその希望どおりになるわけではなく、他の従業員の希望を踏まえた被告での調整の結果、休日として希望していた日においても、本件業務に従事しなければならなかった
   そして、本件業務については、新規の会員に対してやり取りを開始して以降は、その者の鑑定士として継続して担当することとされ、新規の会員の割付けについても、勤務開始日の午前9時頃にBから指示される、他の従業員も組み込まれている担当順にしたがって行われ、原告が被告での業務を開始してから2年余りに渡ってその割付けを断ったことがなかったことを踏まえれば、
   原告において、業務の依頼、業務従事の指示等に対し、諾否の自由があったとはいえない
     b)業務遂行上の指揮監督の有無について
   原告は、本件業務に従事するに当たり、かつてBから提供を受けたメールのテンプレートを参考にしていたものであるが、
   その日の業務を終了する際には、被告から、メールで担当している各会員の氏名やそのシステム上のリンク先を記載し、各会員とのやり取りの状況や業務の方向性を報告するよう求められていた
   また、売上げの状況についても、他の従業員と同様、達成目標額が定められ、その達成状況も把握されており、原告は、その達成状況に応じて、Bから適宜指示を受けるなどしていた。
   これらの事情からすれば、原告は、本件業務を遂行するに当たり、被告から指揮監督と受けていたというべきである。
     c)拘束性の有無及び代替性の有無について
   原告は、その勤務場所について、(令和3年3月頃から令和4年12月頃まで)長野県のアパートから勤務するよう指示され勤務時間についても、被告の指示により、開始及び終了についてメールでの報告を求められるなど、被告による管理が及んでいた。
   また、原告は、第三者によって本件業務を行うことを禁止されていた。
     d)報酬の労務対償性について
   本件各契約に基づく被告からの金員の支払に関し、一部、インセンティブ分はあるものの、その大部分を毎月30万円の固定額が占めており、これが原告による売上げの多寡にかかわらず支払われていたものであることからすれば、上記支払は原告の労務の提供に対する対価としてされていたというべきである。 
        e)小括
   これらの事情によれば、原告は、被告による指揮監督下によって労務を提供し、これに対する対償を支払われていた者であるというべきであり、本件各契約は、労働契約と認めるのが相当である。
 イ 被告の主張について
  a)被告は、原告については、被告の他の従業員と立場や扱いについて大きな相違があるとし、
   まず、原告には被告でのミーティングに参加する義務がなかったとして、ミーティングが多くなる旨の一斉送信メールに原告が含まれていなかったことを指摘する。
   しかしながら、上記メールには「出社タイミングはそろえる方向で進めています。」と記載されており、送信された時期も令和4年9月28日であって、原告が長野県で本件業務に従事していた時期である。
  b)また、被告は、他の従業員とは飲み会を実施してコミュニケーションを図る機会を設けていたものの、原稿については勧誘していないことも指摘する。
   しかしながら、被告が指摘する飲み会の実施時期も同年8月や11月であって、やはり原告が長野県で業務に従事していた時期ある。
  c)以上からすれば、被告の指摘する点が原告と他の従業員とで異なっていたとして、上記アに係る判断を左右しない

(2)結論
   原告の請求には理由がある(全部認容)。


【コメント】

   本裁判例は、原告が、被告と本件各契約を締結した上で、被告の運営する占いサイトの会員から届くメールに対して、占いの結果を踏まえたアドバイス等をメールで回答する業務(本件業務)を行っていたところ、本件業務に係る契約を、労働契約と認めた事例です。
   原告と被告との間では、本件各契約の期間中、本件各業務委託契約書が交わされ時期もありましたが、原告は、被告の他の従業員と同様の業務管理システムに組み入れられており、その結果、仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由も無かった点に、事案としての特徴があります。
   本裁判例は、「労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)」(1985年)が示した判断基準に沿って、認定事実を評価し、上記の結論を導いたものと思われます。

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