【知的財産】東京地裁令和7年3月7日判決(裁判所ウェブサイト)

原告が著作権を有する配信動画の一部を複製した動画ファイルを、本件投稿者がファイル転送サービスのサーバーにアップロードしたか否かは不明であるが、同人が電子掲示板に上記のファイルのダウンロードページのURLを記載した記事を投稿したことにより、不特定又は多数の者が上記のファイルをダウンロードできるようになったことから、同人は、原告の有する上記の配信動画に係る著作権(公衆送信権)を侵害したと認定した事例(確定状況不明)


【事案の概要】

(1)原告は、インターネット上の動画共有サイトであるYouTube、ツイキャス等において、「B」との名称で活動し、ツイキャスにおいては、「C」(アカウント名:〇〇)との名称のチャンネル(以下「本件チャンネル」という。)を運営する者である。
   被告は、インターネットの接続に関する業務等を営む株式会社である。

(2)本件チャンネルにおいては、無料で視聴できる動画とともに、本件チャンネルのメンバーシップに登録している有料会員のみが視聴することができる有料会員限定の動画が配信されていた。
   原告は、令和〇年〇月〇日、動画(以下「本件配信動画」という。)を制作し、令和〇年〇月〇日から、本件チャンネル上で、本件チャンネルの有料会員に限定して、本件配信動画を配信した。本件チャンネルの有料会員は、同日から約3週間、本件チャンネルにおいて、本件配信動画を視聴することができた。

(3)氏名不詳者(以下「本件投稿者」という。)は、別紙投稿記事目録(略)の「投稿日時(JST)」欄記載の日時に、同目録の「IPv6アドレス」欄記載のIPアドレスを使用して、同目録記載の「接続先IPアドレス」欄記載のIPアドレスに接続し、同目録の「スレッドタイトル」欄記載の「D」のスレッドに、同目録の「投稿内容」欄記載の記事(以下「本件記事」という。)を投稿した。
   本件記事中の「https://〇〇」とのURL(以下「本件URL」という。)は、無料の大容量ファイル転送サービスである「ギガファイル便」のウェブページのURLである。
   本件URLにアクセスすることにより、本件配信動画の一部を複製した動画ファイル(以下「本件動画ファイル」という。)をダウンロードすることができた(注:本件投稿者が本件動画ファイルをギガファイル便にアップロードしたか否かには争いがある。)。

(4)ギガファイル便を用いたファイルの送信の仕組みは、以下のとおりである。
 ア ファイルを送信しようとする者(以下「ファイル送信者」という。)が、ギガファイルのウェブサイトにおいて、アップロードしようとするファイルをアップロードすると、アップロードしたファイルをダウンロードすることができる固有のウェブページ(以下「ダウンロードページ」という。)URLが表示される。
 イ ファイルの送信者は、ファイルを受信しようとする者(以下「ファイルの受信者」という。)に対し、ダウンロードページのURLを伝え、ファイルの受信者は、ダウンロードページのURLからダウンロードページにアクセスし、ファイルをダウンロードすることができる。
 ウ ギガファイル便のウェブサイトにおいては、アップロードされたファイルのファイル名等から、ダウンロードページのURLを検索する仕組みは設けられていない

(5)原告は、本件訴えを提起して、被告が提供するインターネット接続サービスを介して、インターネット上の電子掲示板にされた投稿(本件記事)において、原告が配信した動画(本件配信動画)を複製した動画ファイル(本件動画ファイル)を無料でダウンロードすることができるウェブページのURL(本件URL)が公開されたことによって、原告の著作権(公衆送信権)等が侵害されたことが明らかであるとして、被告(注:被告は、別紙発信者情報目録(略)記載の発信者情報である、本件投稿者の氏名、住所、電話番号及びメールアドレスを保有している。)に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5条1項に基づく発信者情報の開示を求めた。


【争点】

   侵害情報の流通によって「権利」が侵害されたことが明らかといえるかであり、特に、本件配信動画に係る著作権の侵害の有無
である。
   以下、上記の争点についての裁判所の判断の概要を示す。
   なお、各当事者の主張は、以下のとおりである。
   (原告の主張)
 ア 本件投稿者がギガファイル便に本件動画ファイルをアップロードした者と同一人物である場合には、その者は、本件動画ファイルのアップロード及び本件記事の投稿により、本件動画ファイルを、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信権装置の「公衆送信用記録媒体」であるギガファイル便のサーバー上に「記録」した上、本件URLを公開することによって、本件動画ファイルを送信可能化したものであるから、原告の本件配信動画に係る著作権(公衆送信権)を侵害したことが明らかである。
 イ (本件投稿者が本件動画ファイルをアップロードした者と同一人物でない場合でも)公衆は、本件URLを知らない限り、本件動画ファイルにアクセスすることができないところ、本件投稿者は、本件記事を投稿し、本件URLを公開することによって、ギガファイル便のサーバー上に記録された本件動画ファイルを「自動公衆送信し得るようにすること」を行い、本件動画ファイルを送信可能化したものであるから、原告の本件配信動画に係る著作権(公衆送信権)を侵害したことが明らかである。
 ウ (本件投稿者が本件動画ファイルをアップロードした者と同一人物でない場合でも)本件投稿者は、本件配信動画が原告の著作物に該当することを認識し、かつ、少なくとも本件記事の投稿により原告の本件配信に係る著作権が侵害される蓋然性が高いことを認識、認容しながら、本件記事を投稿したことにより、公衆が本件URLにアクセスすることができる状況を作出し、本件動画ファイルの自動公衆送信を促進したものであるから、原告の本件配信動画に係る著作権(公衆送信権)の侵害を幇助したことが明らかである。
  (被告の主張)
 ア 本件投稿者は、本件動画ファイルをアップロードした者から何らかの手段によって本件URLを伝えられた可能性があるから、本件投稿者が本件動画ファイルをアップロードした者と同一人物であるかは明らかでない。
 イ 本件投稿者が本件動画ファイルをアップロードした者と同一人物でない場合には、本件動画ファイルがギガファイル便のウェブサイト上にアップロードされた時点又は本件URLが本件動画ファイルの投稿者によって第三者に公開された時点で、本件動画ファイルの送信可能化はされているから、本件記事の投稿によって重ねて本件動画ファイルの送信可能化がされたとはいえない
 ウ 本件URLは本件動画ファイルをアップロードした者によって第三者に公開されている可能性があるから、本件投稿者が、本件動画ファイルの自動公衆送信を促進し、原告の本件配信動画に係る著作権(公衆送信権)の侵害を幇助したことが明らかであるとはいえない。


【裁判所の判断】

(1)争点(本件配信動画に係る著作権の侵害の有無)について
 ア 著作物性及び著作権者について
   本件配信動画は、原告が、視聴者のコメントや動画内で取り上げる題材に関する情報を映しながら原告の見解を発信するもので、一定の創作性を有し、原告が制作し、録画した動画であるから、映画の著作物(著作権法10条1項7号)に当たり、著作権者は原告であると認められる。
 イ 本件動画ファイルに係る動画が本件配信動画の複製物であることについて
   本件動画ファイルに係る動画は、本件配信動画の大部分を録画したものであり、表現上の本質的な特徴の同一性を維持し、これに接する者が本件配信動画の本質的な特徴を直接感得することができるものといえる。
 ウ 公衆送信権の侵害について
  a)ギガファイル便のサービスを用いてファイルをダウンロードするためには、ファイルのダウンロードページのURLが必要であるところ、ダウンロードページのURLは、ファイルをギガファイル便にアップロードした者にしかわからない仕組みとなっているといえる。
   本件動画ファイルについても、本件URLを知らなければ、これをギガファイル便からダウンロードすることはできなかったものと認められるところ、本件記事が投稿された時点までに、本件URLについて、インターネット上で公開されるなど、不特定の者や多数の者に知られていたことはうかがわれない
   また、本件記事は、①本件チャンネルのアカウント名を示す「〇〇」の記載、②本件配信動画の配信日時を示す「〇〇」の記載、③「〇〇」として、本件配信動画の〇分前後で原告が「〇〇」と述べたことを示す記載及び④ドメイン名自体からギガファイル便のウェブページのURLであることが分かる本件URLの記載がされ、著名な電子掲示板上の本件チャンネルに関するスレッド上に投稿されたものである。そうすると、本件記事は、これに接した者が、本件URLから本件チャンネルの動画をダウンロードすることができると理解し得るように記載されたものといえる。
   以上によれば、ギガファイル便にアップロードされた本件動画ファイルについては、本件記事の投稿の前には、不特定又は多数の者からの求めに応じて自動的に送信されることはなかったものであるが、本件記事の投稿によって、不特定又は多数の者がダウンロードすることができるようになり、自動公衆送信されるにいたったものというべきであり、これを左右するに足りる証拠は見当たらない。
  b)なお、本件投稿者が本件動画ファイルをギガファイル便にアップロードしたか否かには争いがあり、これを認めるに足りる証拠はない
   もっとも、以上に認定したところ及び本件記事の内容に照らせば、本件投稿者は、本件動画ファイルをギガファイル便にアップロードした者から本件URLを知らされるなどして、本件記事を投稿したことが推認される
   また、本件動画ファイルは、本件チャンネルで配信された動画の複製物であることが明らかなものであり、これを自動公衆送信するためには著作権者の許諾を要するところ、本件動画ファイルをギガファイル便にアップロードしたした者も、本件投稿者も、著作権者である原告の許諾は得ていない(弁論の全趣旨)。
  c)以上の事実関係を前提とすれば、本件記事の投稿は、不特定又は多数の者によって直接受信されることを目的として、不特定又は多数の者からの求めに応じ本件動画ファイルを自動的に送信することを可能としたというべきであるから、本件投稿者は、本件配信動画に係る著作権(公衆送信権)を侵害したものといえる。
   そうすると、本件記事の投稿は、原告の著作権(公衆送信権)侵害を直接的にもたらしているということができるから、「侵害情報の流通によって」原告の本件配信動画に係る著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであるといえる。
 エ 小括
   弁論の全趣旨によれば、原告は本件投稿者に対して損害賠償請求権等を行使する予定であることが認められ、そのために、別紙発信者情報目録(略)記載の発信者情報の開示を受ける必要があるといえるから、原稿には、「当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)がある。

(2)結論
   以上によれば、原告の請求には理由がある(全部認容)。


【コメント】

   本裁判例は、原告が著作権を有する本件動画ファイルを本件投稿者がアップロードしたか否かは不明の事案において、本件記事の投稿の前には、本件動画ファイルが、不特定又は多数の者からの求めに応じて自動的に送信されることはなかったが、本件記事の投稿によって、不特定又は多数の者がダウンロードすることができるようになり、自動公衆送信されるに至ったことから、本件投稿者は、本件配信動画に係る著作権(公衆送信権)を侵害したと認定した事例です。
   なお、原告の著作物をファイル転送サービスのサーバーにアップロードした者と電子掲示板にダウンロードページのURLを記載した記事を投稿した者とが同一人物と認定された事案において、アップロード行為のみでは公衆送信権侵害を認めず、投稿行為に至る一連の行為を全体としてみて、公衆送信権侵害を認めた裁判例として、たぬピク事件・東京地裁平成31年2月28日判決があります。

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